開催日:2026年3月25日(Day 1)・26日(Day 2)
開催地:タイ・バンコク
Grande Centre Point Ratchadamri / Bangkok Metropolitan Administration General Hospital
サミット概要
2026年3月25日・26日の2日間にわたり、タイ・バンコクにて「Southeast Asian Infusion Nursing Summit 2026」が開催されました。
テーマは「Building Collaboration, Competency and Clinical Excellence」。東南アジア地域における輸液看護の発展を目的とした国際会議であり、各国の専門団体が連携しながら、臨床実践・教育・研究の共有を通じて輸液治療の質向上を目指す場となりました。
主催はタイのInfusion Nurse Network Association(INNA)、後援はテルモ株式会社(Terumo Medical Care Solutions)。マレーシア、インドネシア、シンガポール、日本など各国の輸液看護のリーダーや研究者が参加しました。
プログラム概要
Day 1(3月25日):各国ベストプラクティス共有・ワークショップ
各国代表による「Country Best-Practice Presentations」として、タイ(INNA)・マレーシア(INSM)・インドネシア(INA PERSAI)・シンガポール(INSS)・日本(J-IVCARES)がそれぞれの取り組みを発表しました。
午後には各国代表によるパネルディスカッションが行われ、感染予防・手技の標準化・ガイドラインの実装など各国共通の課題について活発な意見交換が行われました。
さらに、「Building Competency Framework for Infusion Nurses」をテーマとしたインタラクティブワークショップでは、参加者が国をまたいだグループに分かれ、4つのコンピテンシードメインについてブレインストーミングと討議を行いました。
コンピテンシードメイン(4領域)
- Legal and Ethical Nursing Practice(法的・倫理的看護実践)
- Professional Nursing Practice(専門的看護実践)
- Collaborative Practice & Teamwork(協働実践とチームワーク)
- Continuing Professional Education & Development(継続的な専門教育と発展)
Day 2(3月26日):病院見学
2日目は、Bangkok Metropolitan Administration General Hospital(Klang Hospital)への見学が行われました。輸液療法のCenter of Excellenceとして知られる同院において、プロトコルや継続的な研修体制などについての視察・ディスカッションが実施されました。閉会式では、Day 1のワークショップ成果をもとにまとめられた「地域行動計画(Regional Action Plan)」が発表されました。
日本からの参加
日本からは、J-IVCARES(一般社団法人 日本血管内カテーテル研究協議会)を代表して、以下の2名がオンラインで参加・発表しました。
| 登壇者 | 所属 | 発表テーマ |
|---|---|---|
| 安田英人 先生(代表理事) | 自治医科大学附属さいたま医療センター 救急・集中治療科 准教授 | Reconstructing Intravascular Catheter Management in Japan |
| 酒井博崇 | 藤田医科大学 保健衛生学部看護学科 准教授 / 診療看護師(NP) | Competency Framework for Infusion Nurse in Japan |
安田英人先生の講演
Reconstructing Intravascular Catheter Management in Japan

講演の背景と課題提起
安田先生は、日本における血管内カテーテル管理の現状と課題を提示されました。末梢静脈カテーテル(PIVC)は「簡便な手技」として認識されることが多く、それゆえリスクが見過ごされやすいという実態が指摘されました。
PIVCは感染・静脈炎などの合併症を伴う侵襲的デバイスであり、適切に管理されなければ患者安全に重大な影響を及ぼします。
提示された2つの重要な視点
講演では、カテーテル管理における本質的な問題として以下の2点が挙げられました。
- 不要なカテーテル留置(Unnecessary indwelling)の削減
- 無菌操作の徹底(Breach of asepsisの防止)
具体的な実践手法の紹介
これらの課題への対応として、以下のツールと手法が紹介されました。
- I-DECIDED:カテーテルの継続的必要性を体系的に評価するためのアセスメントツール
- ANTT(Aseptic Non Touch Technique):無菌的非接触技術の実践フレームワーク
安田先生は、オーストラリア・AVATARグループでの研究経験を踏まえ、研究・教育・臨床を統合した「組織的アプローチ」の重要性を強調。日本全体をカバーする国内プラットフォームの構築が急務であると提言されました。
酒井博崇先生の発表
Competency Framework for Infusion Nurse in Japan

日本の看護師の役割拡大と教育体制
酒井は、日本における看護師の役割拡大の背景として、特定行為研修制度および診療看護師(NP)制度の概要を紹介しました。これらの制度が、輸液カテーテル管理の専門性向上においても重要な基盤となっていることを示しました。
コンピテンシー育成の仕組み
2025年版「輸液カテーテル管理に関する実践基準」を基盤として、以下のような段階的な教育・評価モデルを説明しました。
- キャリアラダーに基づく段階的教育:習熟度に応じた体系的な学習設計
- シミュレーション教育・OSCE:技術習得の客観的評価方法
- 継続教育(卒後教育):臨床現場での継続的なスキル維持・向上
藤田医科大学病院における実践モデル
静脈注射研修の具体例として、藤田医科大学病院における教育プログラムを紹介。教育・評価・臨床実践を一体化した育成モデルは、各国の代表者から高い関心を持って受け取られました。本発表は、東南アジア地域におけるコンピテンシーフレームワーク構築の議論において、日本の教育モデルを国際的に共有する貴重な機会となりました。
サミットの成果と今後の展望
本サミット全体を通じて、輸液治療の質向上には「ガイドライン・教育・臨床実践を統合したアプローチ」が不可欠であることが改めて確認されました。
各国に共通する課題として、以下のテーマが共有され、国際的な連携の必要性が強く認識されました。
- 教育の標準化
- 手技および管理の質の均一化
- 感染予防の徹底
Day 1のワークショップ成果をもとにした「地域行動計画(Regional Action Plan)」が策定され、今後の定期的なフォローアップに向けた合意がなされました。
J-IVCARESの取り組み
J-IVCARESでは、本サミットでの議論も踏まえ、引き続き以下の活動を通じて日本における血管アクセス管理および輸液治療の質と安全性の向上に貢献してまいります。
- I-DECIDED・ANTTの普及:評価ツールと無菌技術の全国的な導入支援
- 国内データベースの構築:エビデンスに基づく実践の推進
- 教育プログラムの標準化:体系的な輸液看護教育の整備
- 国際連携の強化:東南アジア各国との継続的なネットワーク構築
本記事に関するお問い合わせは、J-IVCARESまでお寄せください。

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