自施設の集中治療部門は、現在でも中心静脈カテーテルの留置は内頚静脈が第一選択となり、合併症の発生に関するカテーテルの入れ替えに関しても、対側の内頚静脈および大腿静脈になります。鎖骨下静脈は機械的合併症の発生率や重症度などを考えると嫌煙される傾向にあり、鎖骨下静脈留置の件数は少数です。リアルタイムエコーガイド下穿刺が普及している現代において、充分な教育を受けた術者が増加すると、今後鎖骨下静脈留置が普及し、感染や血栓症などの合併症のリスクが低減される可能性があります。
Site-specific complications of central venous catheterization under systematic ultrasound guidance: a target trial emulation revisiting the 3SITES studyRandomized Controlled Trial. Nicolas Boulet et al;3SITES Study Group.
Crit Care. 2025 Dec 2;29(1):513.
【背景】中心静脈カテーテル留置は集中治療室(ICU)で最も頻繁に行われる侵襲的処置だが、依然として感染症、血栓症、および機械的な合併症のリスクを伴う。現在、リアルタイムの超音波ガイドを用いる手法が広く普及しているが、この手法がカテーテルの挿入部位ごとの合併症発生率の違いにどう影響するかは明らかになっていない。過去に行われた「3SITES試験」では、鎖骨下静脈からの挿入は感染や血栓のリスクを下げる一方で、機械的合併症のリスクを高めることが示されたが、この試験で超音波ガイドが使用されたのは全体のわずか3分の1であった。
【仮説】すべてのカテーテル挿入においてリアルタイム超音波ガイドを使用すれば、挿入部位(内頚静脈、大腿静脈、鎖骨下静脈)間における合併症の発生率の差はなくなるのではないか。
【目的】 すべてのカテーテル挿入がリアルタイム超音波ガイド下で行われたと仮定した枠組みにおいて、3つの挿入部位(内頚静脈、大腿静脈、鎖骨下静脈)間における合併症の発生率を比較すること。
【方法】 3SITES試験のデータセットを用いた、「target trial emulation」という手法による事後解析。挿入部位の選択や超音波ガイドの使用に影響を与える交絡因子を調整するため、逆確率重み付け(IPW)を適用した。主要評価項目は、カテーテル関連血流感染症または症候性深部静脈血栓症(のいずれか早い方)が発生するまでの時間とした。
【結果】 合計3409本のカテーテル(大腿静脈1153本、内頚静脈1267本、鎖骨下静脈989本)が解析対象となった。
- 鎖骨下静脈は、大腿静脈(P = 0.02)および内頚静脈(P = 0.001)と比較して、主要アウトカム(感染または症候性血栓)の発生率が有意に低い結果とった。
- 内頚静脈と大腿静脈の間には、主要アウトカムの発生率に有意差はなかった(P = 0.97)。
- カテーテル関連血流感染症は、内頚静脈と比べて鎖骨下静脈で有意に少なくなった(P = 0.001)。
- 無症候性の血栓症は、大腿静脈および内頚静脈でより多く発生した。
- 重大な機械的合併症は全体としてまれであり、3つの挿入部位間で有意差は見られなかった。
【考察】 全例で超音波ガイドを使用するという仮定のもとでも、著者の当初の仮説に反して部位間の感染・血栓リスクの差は残り、鎖骨下静脈の優位性が示された。一方で、重大な機械的合併症の発生率は過去の試験時よりも顕著に低く、部位間の有意差もなくなった。これは、普遍的な超音波ガイドの導入によって処置の安全性が向上し、鎖骨下アプローチの大きな障壁であった機械的合併症のリスクが現在では相殺されていることを示唆している。
【結論】 すべての中心静脈カテーテル留置がリアルタイム超音波ガイド下で行われると想定した場合、鎖骨下静脈アプローチは、機械的合併症の増加を伴うことなく感染および血栓のリスクが低い状態を維持しており、ICUにおける鎖骨下静脈の優先的な使用を支持する結果となった。

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