近年、midline catheter(MC)は、PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)より侵襲が少なく、中心静脈カテーテル関連血流感染(CRBSI)のリスク低減が期待できるデバイスとして注目されています。一方で、実際には「本当にPICCより安全なのか」「合併症は少ないのか」といった点については、十分なランダム化比較試験(RCT)のエビデンスが不足していました。
今回は、成人患者におけるmidline catheterとPICCの安全性・有効性を直接比較したRCTをご紹介します。
【紹介論文】
Safety and Efficacy of Midline vs Peripherally Inserted Central Catheters Among Adults Receiving IV Therapy: A Randomized Clinical Trial
Thomsen SL, et al.
JAMA Network Open. 2024;7(2):e2355716.
doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.55716
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10865154/
【背景】
末梢静脈カテーテルは広く使用されていますが、3〜4日程度で交換が必要になることが多く、中〜長期間の輸液療法ではPICCや中心静脈カテーテルが選択されることがあります。一方、midline catheterは、上腕の太い静脈に留置し、PICCより短く、先端が中心静脈に到達しないデバイスであり、「末梢ラインとPICCの中間的な選択肢」として位置づけられています。
近年では、挿入技術やカテーテル素材の改良により使用が増えているものの、既存研究では「感染リスクは低い可能性」が示唆される一方、「合併症が増える可能性」も報告されており、実際の安全性評価は明確ではありませんでした。
本研究は、5〜28日間の静脈内治療を必要とする成人患者を対象に、midline catheterとPICCを直接比較し、安全性と有効性を検証する目的で実施されました。
【方法】
・研究デザイン:単施設ランダム化比較試験(RCT)
・対象:5〜28日間の静脈内治療が必要な成人患者304名
・群分け:
- midline catheter(MC)群:152名
- PICC群:152名
・主要評価項目:
- カテーテル関連血流感染(CRBSI)
・副次評価項目:
- 深部静脈血栓症(DVT)
- カテーテル関連合併症
- カテーテル早期抜去
・静脈炎、浸潤、疼痛、漏れなど
・追跡期間:治療終了後90日まで
【結果】
■ CRBSI(カテーテル関連血流感染)
・MC群:0例
・PICC群:1例
→ 両群で有意差なし(P > .99)
■ カテーテル関連合併症
・MC群:20例(13.2%)
・PICC群:11例(7.2%)
→ MC群で有意に多かった
(IRR 2.37、95%CI 1.12–5.02、P = .02)
■ 早期抜去率
・MC群:13.2%
・PICC群:6.6%
→ MC群で高率
■ 主な合併症
・漏れ
・偶発的抜去
・閉塞
・浸潤
などの「軽微な合併症」がMC群で多くみられました。
■ 留置期間別解析
16日未満の留置では、合併症率に有意差は認められませんでした。
一方、16日以上になると、MC群で合併症・早期抜去が増加していました。
【結論・まとめ】
本研究では、midline catheterとPICCの間で、CRBSI発生率に差は認められず、いずれも安全に使用可能であることが示されました。
一方で、midline catheterでは、PICCと比較してカテーテル関連合併症が多く、特に16日以上の長期留置では注意が必要であることが明らかとなりました。ただし、合併症の多くは漏れや閉塞などの軽微なものであり、重篤な感染や血栓症は非常に少ない結果でした。
本研究は、「midlineは感染リスク低減を期待できる一方、留置期間が長くなると機械的合併症が増える可能性がある」という重要な示唆を与えています。
今後、自施設におけるVAD選択プロトコルを検討するうえで、「治療期間」「投与薬剤」「患者背景」を踏まえた適切なデバイス選択の重要なエビデンスの1つと考えられます。

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