重症患者さんの管理において、透析や静脈栄養(TPN)などの目的で中心静脈カテーテルを2本同時に留置するケースを経験するかと思います。しかし、複数留置が実際にどの程度中心静脈カテーテル関連血流感染症(CLABSI)のリスクを高めるのか、具体的な数字をご存知でしょうか?
今回は、2つ目の中心静脈カテーテルを同時使用した際に追加されるCLABSIリスクを定量化した研究をご紹介します。
文献情報
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2761992
Comparison of Rates of Central Line–Associated Bloodstream Infections in Patients With 1 vs 2 Central Venous Catheters
William C. Dube, et al. JAMA Network Open. 2020;3(3):e200396.
背景と目的
• 米国のNational Healthcare Safety Network(NHSN)によるCLABSIサーベイランス手法では、2つのCVCを同時に使用(同時CVC)した場合の潜在的な追加リスクが考慮されていません。
• そのため、医学的適応により同時CVC使用を必要とする重症患者を多くケアする施設が、不当に高いCLABSI発生率として評価され、ペナルティを受けてしまう可能性があります。
• 本研究の目的は、2つ目のCVCの同時使用に関連するCLABSIリスクを定量化することです。
研究方法
• 研究デザイン: 後ろ向きコホート研究(2012年1月1日~2017年12月31日)
• 対象: 米国アトランタ地域の4つの一般急性期病院において、CVCを2日以上留置した成人患者50,254人
• 評価方法: 患者を同時使用の可能性について傾向スコアマッチングし、単独使用と同時使用でのCLABSIリスクを比較・評価
結果
全体で64,575本のCVCが使用され、647件のCLABSIが記録されました。同時のCVC使用は13.7%(6,877人)で認められ、主な適応は栄養(14.1%)や血液透析(43.4%)でした。
• CLABSI発症率(傾向スコアマッチング後):
• 同時CVC使用群: 1.9%
• 単一CVC使用群: 1.0%
• 留置期間によるリスク:
• CVC使用期間の3分の2より長く2つのCVCを留置した患者は、CLABSI発症リスクが有意に増加しました(調整リスク比 1.62)。
• 毎日のハザード(単一の低リスクCVCに対するリスク比):
• 2つの低リスクCVC同時使用: 1.78倍
• 低リスクCVC1つ+高リスクCVC1つの同時使用: 1.80倍
• 2つの高リスクCVC同時使用: 1.78倍
多変量解析や生存分析の結果、CVCの組み合わせ(リスクの大小)に関わらず、同時使用によって日々のCLABSIリスクは約80%(約2倍)増加することが判明しました。
結論・まとめ
同時のCVC使用は、単一の低リスクCVCの使用と比較して、CLABSIリスクが約2倍になることと関連しています。施設間のバイアスのある比較を防ぐために、パフォーマンス指標はこの患者リスクの変動を考慮して変更されるべきです。
この研究で最も重要なポイントは、「2本目のCVCが入っているだけで、毎日約80%の余分な感染リスクに患者さんを晒している」ということです。
臨床現場で私たちができる具体的なアクションとしては、「本当に2本のCVCが同時に必要か?」を日々アセスメントすることです。本研究でも指摘されている通り、CVCの数を増やす代わりに、カテーテルのルーメン数(内腔数)を増やすことの検討が正当化される可能性があります。
不要なカテーテルを早期に抜去するという基本的な感染対策の実践が、重大な合併症を防ぎ、患者さんの安全を守るために極めて重要です。



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