PICCを含む長期留置型中心静脈カテーテルにおいて、カテーテル関連血栓症(CRT)は重要な合併症の一つです。
今回は、成人がん患者を対象に、CRT予防を目的とした抗凝固療法の有効性と安全性を検討したシステマティックレビュー・メタ解析をご紹介します。
特に、PICC留置患者に対するリバーロキサバン予防投与の可能性と、そのエビデンスの限界に注目した一報です。
A Systematic Review and Meta-Analysis of Prophylactic Anticoagulation for the Prevention of Catheter-Related Thrombosis in Adult Cancer Patients with Long-Term Central Venous Catheters: Current Evidence, Clinical Uncertainties and Future Directions.
J., Zawadzki, J., & Kudliński, B. (2026): Journal of Clinical Medicine, 15(14), 5566. https://doi.org/10.3390/jcm15145566
【要点】
- がん患者では、PICCを含む長期留置型中心静脈カテーテル(CVC)に関連した血栓形成リスクが高く、カテーテル関連血栓症は治療中断やカテーテル抜去につながる可能性がある。
- 本論文は、PICCだけでなく、CVポートなどを含む成人がん患者の長期留置型CVCを広く対象にして、予防的抗凝固療法の有効性と安全性を検討したシステマティックレビューである。
- このうち、PICC留置患者に対するリバーロキサバン10 mgの予防投与は血栓症を減らす可能性が示されたが、この結果は2つの非ランダム化研究に基づいており、エビデンスの確実性はVery lowと評価された。
- 抗凝固薬の効果はカテーテルの種類によって異なる可能性があり、PICCで得られた結果をすべてのCVCに一般化することはできない。今後は、カテーテルの種類を明確に区別した質の高いランダム化比較試験が必要である。
【この論文の概要と注目点】
PICCを日常的に挿入・管理している中で、「この患者は血栓を起こしそうだ」と感じた経験はありますでしょうか。
PICCは長期の静脈アクセスを可能にする一方、カテーテルそのものが血管内皮障害や血流停滞を引き起こし、特にがん患者では悪性腫瘍に伴う過凝固状態も加わることで、血栓形成のリスクが高まります。実際、カテーテル関連血栓症(CRT)はカテーテル機能不全だけでなく、カテーテル抜去や抗凝固療法を必要とし、時にはがん治療そのものを中断させる原因にもなります。
では、PICCを留置した時点から抗凝固薬を予防投与すれば、血栓症を減らせるのでしょうか。
2026年にJournal of Clinical Medicineに掲載されたKaniaらのシステマティックレビュー・メタ解析では、成人がん患者に留置された長期中心静脈カテーテルに対する予防的抗凝固療法の有効性と安全性を検討したものです。16研究を対象とし、低分子ヘパリン、ワルファリン、直接経口抗凝固薬(DOAC)などによる血栓予防について評価しています。
この論文では、CVポートやヒックマンカテーテルなどを含む長期留置カテーテルを扱っていますが、中でも注目したいのが、PICCとリバーロキサバン10 mgによる予防です。
PICC留置患者を対象としたLvらとSangらの2つの非ランダム化研究、計593例を統合した解析では、リバーロキサバンによる予防投与は、対照群と比較してPICC関連血栓症の発生率低下と有意に関連していました(RR 0.23、95% CI 0.11–0.48)。
一方で、この結果をそのまま「PICC留置患者にはリバーロキサバンを予防投与すべき」と解釈することはできません。
リバーロキサバンのメタ解析はわずか2研究からなり、GRADEによるエビデンスの確実性は「Very low(非常に低い)」と評価されています。また、出血については評価されてはいるものの、研究間で定義や報告方法が統一されておらず、定量的な統合解析は行われていません。
さらに重要なのは、「CVC」という一括りで考えてはいけないという点です。リバーロキサバンのメタ解析に含まれた2研究はPICCを対象としているのに対し、低分子ヘパリンのRCTはより幅広い長期CVCを対象としていました。著者らは、PICCはCVポートなどの他の長期留置型デバイスとは異なる血栓リスクプロファイルを有するため、リバーロキサバンの結果は「PICC関連血栓症」に限定して解釈すべきであり、すべての長期留置CVCへ一般化すべきではないと指摘しています。
対照的に、3件のRCT、計1,022例を統合した低分子ヘパリンの解析では、CRTを減少させる方向性は認められたものの、統計学的有意差には至りませんでした(RR 0.77、95% CI 0.53–1.12)。
今後は、がん種、カテーテルの種類、抗凝固療法などを可能な限り均質化し、十分な検出力を持つランダム化比較試験で検証する必要性を指摘しています。



コメント