重症患者さんの循環動態管理において、動脈圧ライン(末梢動脈カテーテル:peripheral arterial catheter)は、連続的な血圧測定や頻回の採血を目的として日常的に使用されています。
中心静脈カテーテル(CVC)ではカテーテル関連血流感染症が重要な合併症として広く認識されていますが、「動脈圧ラインの感染リスクは実際どの程度なのか?」については、意外と具体的な数字を目にする機会は少ないかと思います。
今回は、ICUにおける末梢動脈カテーテルのfailureおよび合併症について、約19,000本のカテーテルを統合して評価した2026年のsystematic review / meta-analysisをご紹介します。
文献情報
Levido A, Marsh N, Corley A, et al.
Incidence of peripheral arterial catheter failure and complications in intensive care: a systematic review and meta-analysis.
Anaesthesia. 2026;81:726–737.
DOI: 10.1111/anae.70074.
https://doi.org/10.1111/anae.70074
背景と目的
• 末梢動脈カテーテルは、ICUにおいて血行動態モニタリングや採血のために広く使用されています。
• 一方、中心静脈カテーテルと比較すると、動脈カテーテルのfailureや感染を含む合併症については十分に研究されておらず、その発生率も明確ではありません。
• 特に、これまでの研究では「catheter failure」や「感染」などのアウトカム定義が統一されていないことも問題となっています。
• 本研究の目的は、成人ICU患者に留置された末梢動脈カテーテルについて、カテーテルfailureおよび関連する合併症の発生率をsystematic review / meta-analysisによって定量化することです。
研究方法
• 研究デザイン:Systematic review / meta-analysis
• 対象:成人ICU患者に留置された末梢動脈カテーテル
• 対象研究:39研究
- 観察研究:22研究
- Randomised controlled trial(RCT):17研究
• 対象となった末梢動脈カテーテル:19,018本
• 各研究からカテーテルfailure、感染性合併症、非感染性合併症などを抽出し、random-effects meta-analysisによって統合発生率を算出
結果
39研究、合計19,018本の末梢動脈カテーテルが解析されました。
主な結果は以下の通りです。
• All-cause arterial catheter failure:13.0%
(95%CI 7.6–19.5%)
・Non-infectious catheter failure:19.8%
(95%CI 12.2–28.7%)
• Catheter-associated / catheter-related bloodstream infection:1.3%
(95%CI 0.7–2.1%)
• Local infection:1.2%
(95%CI 0.4–2.4%)
つまり、動脈圧ラインに関連した血流感染は決して「ゼロに近い合併症」ではなく、既存研究を統合すると約100本に1本程度で血流感染が報告されていることになります。
感染についての重要なポイント
今回の解析では、catheter-associated / catheter-related bloodstream infectionの統合発生率は1.3%、局所感染は**1.2%**でした。
一方で、この数字を解釈する際には注意が必要で、各研究における、血流感染の定義、カテーテル感染の定義、局所感染の定義が必ずしも統一されていませんでした。
そのため、「動脈圧ラインの感染率は1.3%」と単純に断定するのではなく、
「既存研究を統合すると、動脈カテーテル関連/関連疑い血流感染は約1.3%認められるが、感染定義やcatheter-daysの報告には研究間でばらつきがある」と理解することが重要です。
結論・まとめ
本systematic review / meta-analysisでは、ICUで使用される末梢動脈カテーテルは、感染だけでなく、閉塞や機能不全などを含めたさまざまな合併症によって感染を起こすことが示されました。
特に注目すべき点として、
血流感染:1.3%
局所感染:1.2%
という結果が示されており、動脈圧ラインについても感染源として無視できないことが分かります。
また、カテーテルfailureそのものも決して珍しくなく、著者らは、動脈カテーテルのfailureや合併症を減少させるための予防策と、研究間で統一されたアウトカム定義が必要であると指摘しています。
臨床現場で重要なこと
この研究で特に重要なポイントは、
「Aラインも血流感染の原因になり得る」
ということです。
発熱や菌血症を認めた重症患者では、CVC、PICC、尿路、肺炎、腹腔内感染などに目が向きがちですが、末梢動脈カテーテルについても感染源として評価する必要があります。
また、CVCと同様に、
「このAラインは今日も本当に必要なのか?」
を日々評価することが重要です。
動脈圧ラインはICUではあまりにも日常的なデバイスですが、「末梢動脈カテーテルだから感染リスクはほとんどない」と考えず、一つの侵襲的血管内デバイスとして管理することが患者安全につながると考えられます。



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